大腸がんは、日本人に増加傾向が著しいがんです。年間の罹患数が1990年には6万人、1999年には9万人を超え、2015年ごろには胃がんを抜くとの予測もあります。また、大腸がんによる死亡は、男性では肺がん、肝臓がんに次いで3番目、女性では1番目に多くなると推定されています。
男性も女性もほぼ同じ頻度で大腸がんにかかります。60歳代がピークで70歳代、50歳代と続きます。欧米と比べ、10歳ほど若い傾向があります。5〜10%の頻度で30歳代、40歳代の若年者に発生し、若年者大腸がんは家族や血縁者の中に多発する傾向が認められることがあります。
大腸がんの発生には、遺伝的因子よりも環境的因子の比重が大きいと考えられています。食生活の急激な欧米化、特に動物性脂肪やタンパク質のとり過ぎが原因ではないかといわれています(詳しくは「食生活とがん」の項を参照して下さい)。しかし、5%前後の大腸がんは遺伝的素因で発症するとされています。大腸がんにかかりやすい危険因子として、1) 大腸ポリープになったことがある、2) 血縁者の中に大腸がんにかかった人がいる、3) 長い間潰瘍性大腸炎にかかっている、4) 治りにくい痔瘻(じろう)などの因子が指摘されています。大腸ファイバースコープを用いた精度の高い検査では、大腸ポリープはかなりの頻度で見つかります。一部のポリープはがんになることがありますが、多くはがんにはなりません。ポリープが見つかった場合は専門医に相談し、大きさ、かたち、色調を診てもらい、内視鏡的ポリープ切除などの適切な処置を受ける必要があります。
大腸がんは早い時期に発見すれば、内視鏡的切除や外科療法により完全に治すことができます。少し進んでも手術可能な時期であれば、肝臓や肺へ転移(これを遠隔転移と呼びます)しても、外科療法により完全治癒が望めます。つまり、外科療法が大変効果的です。しかし、発見が遅れれば、肺、肝臓、リンパ節や腹膜などに切除困難な転移がおこります。こうした時期では、手術に加え放射線療法や化学療法(抗がん剤治療)が行われます。
手術を受けた後に再発することもあります。術後は定期的に(3〜4ヶ月の間隔)再発チェックのための検査を受ける必要があります。肝臓、肺、腹膜が転移しやすい臓器であり、また、切除した部位に局所再発がおこることもあります。大腸がんは他のがんとは異なり、早い時期に再発が見つかれば、再発巣の切除により完治も期待できます。再発の8割以上は術後3年目以内に発見されます。手術後、5年以上再発しないことが完治の目安です。
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